うとうととうたた寝をしていた。珍しく誰もいない駅のホームのベンチで。
肌寒い12月のはじめとはいえ、腰には貼るカイロ、首が埋もれるようなふかふかのマフラー、手袋に膝下コート、と頭のてっぺんから爪先まで完全に防寒対策がなされていれば、眠りに落ちてしまうほどの心地よい温度に身体が包まれうっかり夢の世界へと誘われてしまうこともあるものだ。
にしても、目覚めたらそこは知らない天井ならぬ、知らない床が目の前にありました、なんてこと絶対普通じゃないと思う。
硬く冷たいものが頬に押し付けられている感覚に気がついて、ゆっくり瞼を開けると、黒と赤が交互に配色された、なんともどキツイ床が目の前にあった。
一瞬、頭はどういうことかついていけず、両腕に力を入れれば、どうやら横たわっていたらしい私の体は垂直に半分起こされ、あまりにも見慣れない景色が視界に入った。
......洋風の.....部屋?
寝起きの頭は回転が遅く、見知らぬ部屋でなぜ目が覚めたのか、ここはどこなのか、そもそもどうしてさっきまで駅のホームで電車を待っていたはずなのに、場所が変わっているのだろうかとか、当然湧き上がるべき質問も合間って未だ起動中の脳はフリーズしてビクともしない。
元来なら、いやおかしすぎるだろ!って突っ込みと共にどうかしたら危機すら感じてもいい状況なのに、私は余程長い間、深く眠りにでも落ちてしまっていたのか、目をこするだけでしばらく戸惑うことすら出来ないでいた。