「山田も知ってんだろ?」
今度は山田に話を向ける。

「もともと柳店に通ってたからね。ユーヤはイケメンだしお母さんもきれいでしょ。しかも、あのお母さん美人なのに気さくで。親子で人当たりがいいっていうかね」

柳店じゃ有名だったって事らしい。
しかし、南が丘店や本店のスタッフまで知り合いになってるとは驚きだ。
全店舗合同で陸上競技場を借り切って測定会したり、シティマラソンに参加したり富士登山したりとイベントもあるからなのか。

俺はもともと本社と契約しているプロアスリートの担当だったから、一般の会員とのつながりが全く無かった。
だから、当然知り合いらしき会員はいない。


フロントは柴田に任せて、チラッと見ただけのその有名人の中学生の息子をしっかり見ることにする。

「フロアに行くから後宜しく」
柴田にそう声をかけると、パソコンから顔を上げた柴田がさっきと同じようにフッと笑ったようだった。

別に笹森祐也だけを見に行くわけじゃないぞ。
俺は店舗責任者だからフロアが気になるだけだと言いたくなるが、言ったら更に墓穴を掘ることになるようでやめた。