「やっぱりイケメンなの?」
「そう。鈴木家のイケメン兄弟。次男は大学生」

「絵里子さんの周りってさ、イケメンばかりだよね」
思わずはぁーとため息が出る。

「あ、そうかも」
即答されてまたため息が出る。
「凌くんに隼くんに山口さん」
うふふと笑われた。

え、今何て?俺?

「あの山口さんと出会った結婚式の後、若い子たちに山口さんの連絡先を教えて欲しいって何人にも聞かれたの。2次会でもずいぶんモテてたらしいですね」

「いや、全然」
え?話しかけられたりはしたけど、そんな感じじゃなかったはず。

「まいや由美が言ってましたよ。女の子たちが目をハートにして山口さんに群がっていたって」

「はははっ、鈴木じゃないんだから、有り得ませんよ」
「私にとって山口さんはイケメンじゃなくて、イイオトコかな。何だかイケメンって言い方は外見をさしてるみたいであんまり好きじゃないわ。山口さんは中も外もとても素敵ですよ」

「うわっ。ありがとうございます。お世辞でもうれしいです」
「…お世辞じゃないんですけどね…」

絵里子さんは褒め上手だな。

バタバタがたんがたんと電話の向こう側で音が聞こえた。
「ただいまー。あれ、電話中?俺、風呂入るね」
「うん、支度してあるから入ってらっしゃい」
祐也が戻って来たらしい。

周りが静かになったところで
「あの、絵里子さん。来週どこかで時間を作ってくれませんか?」
思い切ってお願いした。

絵里子さんは快くOKをしてくれて、お互いの都合を合わせ約束を取り付けて電話を切った。

俺は俺なりに頑張ろう。
見上げるとさっきより明るい月があたりを照らしていた。

青のスポーツクーペを運転する絵里子さんは好きだけど、1人で夜中に運転させて泣かすような真似はしたくない。

泣きたくなったら隣で支えてあげたい。
心からそう思う。