鈴木家は本当に絵里子さんの部屋の真上だった。
かなり広い間取り。5LDK位か?
思わずキョロキョロと見まわしてしまう。
「すごいな」

「離婚する前は絵里子もこのフロアに住んでましたよ。間取りは違うけど、総面積はあまり変わらないはず」

リビングのソファーに座るように勧められた。

「今日、お袋は旅行でいません。親父は祐也が帰ってしまったからガキみたいに拗ねてもう寝てしまいました。だから、気兼ねはなしで」

真剣な顔をして真っ直ぐに俺を見る。

「わかった。俺も聞きたいことがあるし」

俺も真っ直ぐ鈴木を見る。

「山口さん、絵里子とはどんな関係ですか?あいつ自分のこと山口さんに話したりしてますか?」

「どんな関係って」
俺は彼女が好きだけど。

「山口さんにとってあいつは特別ですか?守りたいと思いますか?」

鈴木の真剣な表情に気圧されそうになるが、ここで負けるわけにいかない。
だいたい何で鈴木にそんなこと言われるんだ。

「大事にしたいし、守りたいと思う。だけど、何で鈴木がそんなに気にするの。玄関の鍵を持ってたり。家族ぐるみの付き合いってだけで2人に恋愛感情はないんだろ」

「恋愛感情はないって絵里子が言ったんですか?」
軽く目を細める。こいつ本当に整った顔をしてる。

「うん?」
いや、そういえば、聞いてない。家族ぐるみの付き合いって聞いただけだ。
「でも、2人の間にそんな気配ないよね」

「そう思いますか?」

「ああ」

「俺、先週絵里子にプロポーズしましたよ」

サラッと言う鈴木に俺は絶句した。
プロポーズ?プロポーズってプロポーズ?

「へ、返事は?」
何とか声を出した。

「まだです。プロポーズっていってもすぐ結婚って話じゃないので。俺の事情もあるし。今の仕事が落ち着いてからだから2、3年後ですかね」