祐也に案内してもらい、地下の駐車場に停めて部屋に向かう。

普段から送る度に思ってたけど、ここってかなりの高級マンションだな。タワーマンションではない。住宅街にあって周りの景観を損ねないように配慮されているのかと思う。3階建ての低層マンション。

部屋の前に着くと祐也はインターホンを鳴らさず鍵を開ける。
「どうぞ」

広い。何だこれ。
玄関はオートライトになっているらしい。
玄関だけで住めそう。
祐也に連れて行かれた先はリビングだった。

すぐに奥の部屋のドアが開く。

「お帰り~。早かっ…きゃぁ!」
洗濯かごを抱えたモコモコした部屋着ですっぴんの絵里子さんが出てきた。

「ね、動いてるでしょ」祐也は困ったように俺を見る。
はぁーとため息をついて「何か言ってやって下さい」と言った。

「祐也!誰か連れて来るときは先に連絡しろって言ってるでしょ!」
絵里子さんは真っ赤。

「だって、どうせ休んでないと思ってさぁ」
「すみません。俺も気になって」
少し申し訳なく思う。いくら祐也に頼まれたからといって遠慮がなさすぎたか。

突然、玄関から続くリビングのドアがガチャっと開いた。

「何を騒いでんだよ。絵里子、コンビニ弁当買ってきたぞ」
入ってきたのは両手にコンビニの袋を持った鈴木だった。

「って、あれ?山口さん?」
俺を見て驚いている。

「あ、凌くん。ありがとう」
絵里子さんは慣れた様子で鈴木からコンビニの袋を受け取る。

「山口さんが祐也を送ってくれたのよ」

「へぇー。そうか。祐也、なかなかやるな。じゃ、2人でメシ食いにいくぞ」
鈴木は目を丸くして祐也の頭を軽くなでた。
「やったー、おごり?」
俺を無視して鈴木と祐也の会話は進む。

「宿題がたくさんあるなら俺んちでやれ」

「OK~持ってくる」

「は?ちょっと、凌くん!祐也!」
絵里子さんが慌てているが、2人は無視。

「じゃ、山口さん。絵里子とコンビニ弁当食べてあげてね。絵里子、今日はこっちに来ないように隼に言っておくから心配ないよ」
「ちょっと俺、凌さんと夕飯。あと勉強もしてくるねー」

鈴木は絵里子さんが口を挟む間も与えず祐也を連れてさっさと出て行く。

「待ちなさいってば」
絵里子さんは玄関まで追いかけるが、「絵里子、うるさい」と2人に言われている。

玄関ドアが閉まる音がして、カチャンと更に外から鍵を閉められたようだ。「もうっ!」

うつむいて赤い顔をした絵里子さんがリビングに戻ってきた。