絵里子さんは俺の車がかなり気に入ったらしい。
そして、やはり運転が上手い。

「運転上手いですね。アクセルワークとかブレーキのタイミングとか。安心して乗っていられる」

「ふふっ。ありがとうございます。この車最高です」

「またいつでもどうぞ」

「絶対ですよ、また運転させて下さいね」

美樹さんは絵里子さんのことを食べ物で餌付けができると言っていたけれど、実は食べ物よりも車じゃないかと思う。
俺のこの車、かなり使えるかも。
心の中で笑う。利用できるものはとことん使おう。


それからというもの、
祐也と妹をダシにして何度もメールをした。

妹が結婚祝いを喜んでいた報告とか、祐也の大会の結果を知りたいとか…。

美樹さんからの飲み会の誘いには必ず都合をつけ、彼女の隣に座った。
祐也の大会も観に行った。もちろん、仕事も兼ねてだけど。

そして、それから祐也の強力なアシストもあって。
祐也と3人で食事をしたりするまでになった。

鈴木との関係は気になったが、あえて聞くことはしなかった。
だいたい、今の俺と彼女の関係だって何だというのだろう。

俺は絵里子さんが好きで仕方がない。
距離を縮めようとしているけど、まだ具体的に告白したわけではない。

もっと近くにいたい。
触れ合いたい。
隣にいる権利が欲しい。

でも、中学生の息子いる彼女にどうやってそれを伝えていいものか。
俺はもちろん祐也も大好きだ。
あの子を含めて絵里子さんが好きで。

でも、それをストレートにぶつけていいものか……悩んでいる。