俺は自分が対応していた保護者に一通りの説明を終えて見学者用のソファに案内するとフロントに戻った。

俺の姿を見た柴田が
「山口、応接室空いてるよな?ちょっと使うぞ」

「え?ああ今は誰も使っていないはずだ」
という俺の返事を聞くか聞かないかのうちにさっさと柴田が歩きだし
「笹森さん、こちらにどうぞ」と先ほどの中学生の母親を応接室に案内している。

この場所からじゃ顔はよく見えないが、姿勢が良い。セミロングの髪にモスグリーンのVネックセーター。グレーのスカートにショートブーツを合わせている。なかなか感じがよさそうな女性だ。

フロントにいた他のスタッフに話しかける。
「なぁ、何で柴田は応接室に?」

見学者用のスペースの奥にパーティションで区切られた面談コーナーもあるのだ。

「そうですね、話なら面談コーナーも空いてますよね。柴田さん、わざわざ応接室とか密室に保護者を連れ込んだりして大丈夫ですか?」とクスクス笑う。

「ま、柴田さんに限ってそっちの心配はないかー」
それを聞いて一瞬ぎょっとする。
何かあったら店舗責任者である俺の管理能力が問われるってことか。

「でも、あの柴田だから」
ない、ない、生真面目が服を着て歩いてるって感じのヤツだぜ。
「じゃ、関係者か個人的な知り合いですかね?」
怪しい関係ではないだろうと思うが。