「プレゼントは決まっているんですか?」
「ええ、リクエストされてます」

「これを」スマホのメール画面を見せる。

「あら、素敵」

画面にはテーブルクロスとカトラリーセットのカタログ写真。
白地に薄いパープルの花柄模様。
妹よりも絵里子さんに似合うイメージなんだけどと思う。

絵里子さんはレジ横にいた店員に在庫確認をお願いしている。
店員が店奥に入り少し待つことになった。

「実は私もこのブランドが好きなんです」

へぇー、やっぱり。
「お似合いだと思いますよ」

「でも、そこそこいい値段なので、なかなか買えませんけど。長く使える物とかを自分へのご褒美って思って買ったりしてます」

まわりの商品を見てみると、確かに安くない。いや、高い。

「すみません、キッチン用品とか普通の値段がわからないんですよ。高いかなって思うんですけど、やっぱり高いんですか?」
正直に聞いてみる。

「そうですよね。独身の男性じゃなかなかわからないですよね」

そっと俺の耳元に口を寄せる。
「例えばこのキッチンマット。ここの2階にあるインテリアショップで買うと3分の1から4分の1の金額で買えるはずです」

いや、やばい。どきどきする。
絵里子さんの吐息。
値段じゃなくて。
まいちゃんが絵里子さんに抱き付きたがる気持ちがよくわかる。
香水ではない良い香りに誘われる。

「あっ、でも、やっぱり値段を出しただけのことはありますよ。使い心地とか、長持ちもするし」
俺が無言になったのを値段のせいだと勘違いしたらしい絵里子さんが少し慌てる。

「あー、いや、少し驚いただけですよ」
はははと笑ってみせる。