君のまなざし

全員笹森さんの元職場のメンバーだという。
笹森さんは転職して今は別のところで働いているそうだ。
笹森さんと美樹さんが同期で1番お姉さんらしい。

隣の美女は
「美樹です。絵里ちゃんの昔からの子分でーす」
と言うので笹森さんは慌てて
「やめてよ、子分じゃないでしょ！同期だよね」
と美樹さんの腕を軽くつかんでいる。

美樹さんはははっと笑っている。
美人なのに気取ってない感じの良い人らしい。

男達より先に美樹さんが名乗ったから
他の女の子３人も続いて自己紹介するけど、
笹森さんと美樹さんと柴田の関係が気になって話が入って来ない。

男達も自己紹介しないとと思っていると
「はい、はーい、木田です。23才でーす。ビールとサッカーと女の子が好きでーす」
木田が真っ先に右手を高々と挙げて言う。
こいつ合コンと勘違いしてないか？

木田がおやつをねだってしっぽを振る犬のようにみえてきた。
お前確かこの店に彼女がいたよな？いいのか？この状況。

ほら、鈴木がジトッとした視線で軽く木田を睨んでる。

「はい、後はこちらから鈴木さんと井出さん、柴田さん、で、みんな知ってる山口さん。皆さん祐也がお世話になってるトレーニングジムのトレーナーさんよ。はいはいじゃ以上。さぁ、乾杯して飲みましょう」
と流れるように笹森さんが俺たちの名前を言って紹介は終了とばかりに打ち切った。

そんな笹森さんの言葉で、木田を睨んでいた鈴木が表情を緩めて笹森さんを見ていたことに気が付いた。

以前から鈴木は合コンのノリが大嫌いだと言っていた。
もしかして笹森さんは木田の軽いノリから、鈴木を気遣いこんな風に自己紹介を打ち切ったのか？という気がしてくる。

鈴木とは前の柳店からの付き合いだし、もしかしたらプライベートな話をするくらい打ち解けているのかもしれない。

乾杯して飲み始めると、もともと酒が入っていたせいで早々に打ち解けた雰囲気になり席を移動したりして話も弾む。