[杏奈side]
あ…春の匂いがした。
私の好きな桜の花がひらひらと散っている。
目の前には春休みを終えて、クラス替えの表に見入っている同級生が見える。
眠そうな顔、新学期に期待している笑顔、緊張している1年生、今年で最後と名残惜しそうな顔…そんな顔が沢山。
私の名前は如月杏奈(きさらぎあんな)。高校2年生。クラス替え表見たいんだけど低身長のせいで何にも見えない!!これじゃ1番最後に教室入ることになるのかな…
「あーんなっ!!おはよう!!」
そんな私に声をかけてきたのはくりくりした目と少し栗色がかった短い髪の毛が特徴の羽鳥美緒(はとりみお)。美緒とは確か小1からの仲なんだよね。
「桜、綺麗だね~。カメラにおさめなくていいの??」
「じ、実はカメラ家に置いてきちゃって笑」
「あちゃ~やらかしたね」
運動ができる美緒は女子バスケットボール部に所属していて、[超]運動音痴な私は高1から写真部に所属している。
お父さんが写真屋さんを経営しているからなのか、小さい頃から写真を撮るのが好きだった。今愛用しているカメラは中学2年生の時の誕生日にもらったもの。だけど、誰からのプレゼントかはわからない…んだよね。両親にも言葉濁されたし。だけど、なんだか落ち着くんだよね。このカメラ。それからこのカメラはずっと使い続けている。
「あ、そういえばクラス替え表見た?」
「私のこの身長で見えると思ってる??」
「思ってません笑148cmだっけ?」
「ゔ…それは言わない約束でしょ!!」
……身長のことを言うのは地雷ってこと、美緒は忘れちゃったの!?
「ごめんごめん笑じゃあうち見てくるわ~」
「160cmの高身長の美緒さんなら見えると思うよ…」
「そんなひがむなって笑」
美緒と一緒にいるとほんとにでこぼこなんだしんた身長差カップルみたいな。皆もわかると思うけどプリクラ撮るときなんて美緒、私に合わせて少ししゃがむんだよ。そのままだとでこぼこするし画面に映るの、美緒の首までなんだから笑
美緒の身長欲しいよね、5cmくらい分けてくれてもいいんじゃないの?って感じ。
桜をぼーっと眺めていると遠くの方から美緒が
「杏奈ー!!うちら同じクラスだった!」
「ほんと!?やったね!!」
「うんっ!!めっちゃ嬉しい!!んだけど…ね」
「ん??何かだめなことでもあるの?」
「実はその…うちと杏奈、七瀬くんと一緒…なんだよね」
「え…陽…??」
「きゃぁぁぁぁ!!」
「七瀬くん相変わらずかっこいい…」
「七瀬くーん!!」
皆が目を輝かせて注目しているのは、明るい茶髪に制服を着崩した180cmはあるだろう高身長の男の子。右耳につけられているホワイトのピアスが1歩歩くたびに太陽に反射してキラキラ光っている。
七瀬陽(ななせはる)。
漫画とかで言ういわゆるイケメン不良男子ってあたりかな。陽は私の幼稚園の頃からの幼馴染。家も目の前で毎日遊んでいた。小学校のときなんかは学年で『有名な両想いの2人』って噂が出たりしてた。
そのたびに陽は
「ちげーから!!杏奈とはただの幼馴染なの!!それだけ!!」
って毎日言ってた。子供ながらに少し傷ついてたんだよね笑 陽は全然気付いてないと思うけど。
だけど中学に入って、陽と私は距離ができ始めた。理由は分からない。距離ができたと言うよりは陽に避けられたって言ったほうがいいのかな。
その頃から陽は1個上の不良の先輩達と絡むようになった。中2の頃に地区の花火大会に行ったとき、陽が煙草を吸っているのを見たことは今も忘れてない。ショックで何も言えなかった。だけどそれ以上に…私は陽のことが好きだったから。必要以上に話しかけたら嫌われる、って思ったのかな。あの時は。まぁ避けられてる時点で嫌われてるんだろうけどね…。
でも陽もこの高校に入ったなんて知ったのは入学式のとき。女子の黄色い声の方を向くと陽がいた。不良だけど、切れ長の目が相変わらずかっこいい。周りの女の子たちが話しかけると陽はその切れ長の目で睨んで
「うるさい。通行の邪魔」
って言った。
中学のときは避けられてたけど、高校生になったんだし何か変わるんじゃないかって勇気を振り絞って陽に声をかけた。
「は、陽。おはよう。高校一緒なんて知らなかった。これからもよろしくね??」
約5秒間の沈黙。私の顔をじっと見つめて
「……俺に関わんない方がいいと思うよ」
そう言って陽は私の目の前を去った。
久しぶりに間近で聞いた陽の声。小学校の頃の高い声なんて全く無くなっていて、 声変わりのした落ち着いた大人な声だった。
それ以上に私は何がなんだかわからなかった。
関わるな??どういうこと??なんで??
これでようやく分かったんだ。私は陽に嫌われているんだって。
それから私と陽は一切関わらなかった。
だから、この今の状況は結構きつい。クラス一緒になるとは思わなかった…。
これから一生関わることがないと信じていたから。
だけどなんでだろう。心の奥底で嬉しいって思ってる自分がいる。
「杏奈、大丈夫??」
「う、うんっ大丈夫だよ、たぶんなんとかなる…ならないよ!?どうしよう!?だって1年前に関わるなって言われてるんだよ!?嫌われてるのに…」
あぁ…新学期。不安でしょうがない。
嬉しいなんて思っちゃいけない。
だって陽は私を嫌っているのだから。
始業式だって言うのに私の気分はドン底…重い足で階段を登ってついに到着してしまった2年5組の教室。
ここに、陽がいるんだ…
そう思って教室の扉を開けられないでいると、美緒が私に声をかけてきてくれた。
「杏奈、大丈夫??」
「美緒~泣 やっぱ怖い!!」
「わかるけどさ~、こればっかりはどうしようも…」
「うぅ…だよね…」
やっぱり、これ、開けるしかないのか…
「ねぇ、早くしてくんねぇ??俺ら、教室入りたいんだけど」
心地よい低音ボイスが胸に響いた。
振り向くとそこには…陽がいた。
「は、陽」
「……先入るから。遅れないようにした方がいーんじゃない?杏……如月」
「え……??」
そうして陽とそのお友達は教室に入っていった。久しぶりに交わした言葉。久しぶりに合わせた視線。嬉しかった。だけど……
『如月』
今まで、陽は私のことを杏奈って呼んでた。なのに、なんでいきなり名字なんかで呼ぶの??すごくよそよそしくて、拒絶されている感じがして、涙があふれてきそうだった。
陽は変わってしまったの??
「杏奈…」
だけど美緒には心配はかけたくない。
だから今自分にできる精一杯の笑顔を作って
「よしっ美緒!!入ろっか!! SHR遅れちゃうもんね!!」
「う、うん…」
やっぱり、美緒も気にしてるみたいだったな…
いつもいつも私は美緒に心配かけてばかり。そろそろ私も大人にならなきゃ。こんなことでうじうじして…もっと強くならなきゃ。
だけど、やっぱり…辛い。
あ…春の匂いがした。
私の好きな桜の花がひらひらと散っている。
目の前には春休みを終えて、クラス替えの表に見入っている同級生が見える。
眠そうな顔、新学期に期待している笑顔、緊張している1年生、今年で最後と名残惜しそうな顔…そんな顔が沢山。
私の名前は如月杏奈(きさらぎあんな)。高校2年生。クラス替え表見たいんだけど低身長のせいで何にも見えない!!これじゃ1番最後に教室入ることになるのかな…
「あーんなっ!!おはよう!!」
そんな私に声をかけてきたのはくりくりした目と少し栗色がかった短い髪の毛が特徴の羽鳥美緒(はとりみお)。美緒とは確か小1からの仲なんだよね。
「桜、綺麗だね~。カメラにおさめなくていいの??」
「じ、実はカメラ家に置いてきちゃって笑」
「あちゃ~やらかしたね」
運動ができる美緒は女子バスケットボール部に所属していて、[超]運動音痴な私は高1から写真部に所属している。
お父さんが写真屋さんを経営しているからなのか、小さい頃から写真を撮るのが好きだった。今愛用しているカメラは中学2年生の時の誕生日にもらったもの。だけど、誰からのプレゼントかはわからない…んだよね。両親にも言葉濁されたし。だけど、なんだか落ち着くんだよね。このカメラ。それからこのカメラはずっと使い続けている。
「あ、そういえばクラス替え表見た?」
「私のこの身長で見えると思ってる??」
「思ってません笑148cmだっけ?」
「ゔ…それは言わない約束でしょ!!」
……身長のことを言うのは地雷ってこと、美緒は忘れちゃったの!?
「ごめんごめん笑じゃあうち見てくるわ~」
「160cmの高身長の美緒さんなら見えると思うよ…」
「そんなひがむなって笑」
美緒と一緒にいるとほんとにでこぼこなんだしんた身長差カップルみたいな。皆もわかると思うけどプリクラ撮るときなんて美緒、私に合わせて少ししゃがむんだよ。そのままだとでこぼこするし画面に映るの、美緒の首までなんだから笑
美緒の身長欲しいよね、5cmくらい分けてくれてもいいんじゃないの?って感じ。
桜をぼーっと眺めていると遠くの方から美緒が
「杏奈ー!!うちら同じクラスだった!」
「ほんと!?やったね!!」
「うんっ!!めっちゃ嬉しい!!んだけど…ね」
「ん??何かだめなことでもあるの?」
「実はその…うちと杏奈、七瀬くんと一緒…なんだよね」
「え…陽…??」
「きゃぁぁぁぁ!!」
「七瀬くん相変わらずかっこいい…」
「七瀬くーん!!」
皆が目を輝かせて注目しているのは、明るい茶髪に制服を着崩した180cmはあるだろう高身長の男の子。右耳につけられているホワイトのピアスが1歩歩くたびに太陽に反射してキラキラ光っている。
七瀬陽(ななせはる)。
漫画とかで言ういわゆるイケメン不良男子ってあたりかな。陽は私の幼稚園の頃からの幼馴染。家も目の前で毎日遊んでいた。小学校のときなんかは学年で『有名な両想いの2人』って噂が出たりしてた。
そのたびに陽は
「ちげーから!!杏奈とはただの幼馴染なの!!それだけ!!」
って毎日言ってた。子供ながらに少し傷ついてたんだよね笑 陽は全然気付いてないと思うけど。
だけど中学に入って、陽と私は距離ができ始めた。理由は分からない。距離ができたと言うよりは陽に避けられたって言ったほうがいいのかな。
その頃から陽は1個上の不良の先輩達と絡むようになった。中2の頃に地区の花火大会に行ったとき、陽が煙草を吸っているのを見たことは今も忘れてない。ショックで何も言えなかった。だけどそれ以上に…私は陽のことが好きだったから。必要以上に話しかけたら嫌われる、って思ったのかな。あの時は。まぁ避けられてる時点で嫌われてるんだろうけどね…。
でも陽もこの高校に入ったなんて知ったのは入学式のとき。女子の黄色い声の方を向くと陽がいた。不良だけど、切れ長の目が相変わらずかっこいい。周りの女の子たちが話しかけると陽はその切れ長の目で睨んで
「うるさい。通行の邪魔」
って言った。
中学のときは避けられてたけど、高校生になったんだし何か変わるんじゃないかって勇気を振り絞って陽に声をかけた。
「は、陽。おはよう。高校一緒なんて知らなかった。これからもよろしくね??」
約5秒間の沈黙。私の顔をじっと見つめて
「……俺に関わんない方がいいと思うよ」
そう言って陽は私の目の前を去った。
久しぶりに間近で聞いた陽の声。小学校の頃の高い声なんて全く無くなっていて、 声変わりのした落ち着いた大人な声だった。
それ以上に私は何がなんだかわからなかった。
関わるな??どういうこと??なんで??
これでようやく分かったんだ。私は陽に嫌われているんだって。
それから私と陽は一切関わらなかった。
だから、この今の状況は結構きつい。クラス一緒になるとは思わなかった…。
これから一生関わることがないと信じていたから。
だけどなんでだろう。心の奥底で嬉しいって思ってる自分がいる。
「杏奈、大丈夫??」
「う、うんっ大丈夫だよ、たぶんなんとかなる…ならないよ!?どうしよう!?だって1年前に関わるなって言われてるんだよ!?嫌われてるのに…」
あぁ…新学期。不安でしょうがない。
嬉しいなんて思っちゃいけない。
だって陽は私を嫌っているのだから。
始業式だって言うのに私の気分はドン底…重い足で階段を登ってついに到着してしまった2年5組の教室。
ここに、陽がいるんだ…
そう思って教室の扉を開けられないでいると、美緒が私に声をかけてきてくれた。
「杏奈、大丈夫??」
「美緒~泣 やっぱ怖い!!」
「わかるけどさ~、こればっかりはどうしようも…」
「うぅ…だよね…」
やっぱり、これ、開けるしかないのか…
「ねぇ、早くしてくんねぇ??俺ら、教室入りたいんだけど」
心地よい低音ボイスが胸に響いた。
振り向くとそこには…陽がいた。
「は、陽」
「……先入るから。遅れないようにした方がいーんじゃない?杏……如月」
「え……??」
そうして陽とそのお友達は教室に入っていった。久しぶりに交わした言葉。久しぶりに合わせた視線。嬉しかった。だけど……
『如月』
今まで、陽は私のことを杏奈って呼んでた。なのに、なんでいきなり名字なんかで呼ぶの??すごくよそよそしくて、拒絶されている感じがして、涙があふれてきそうだった。
陽は変わってしまったの??
「杏奈…」
だけど美緒には心配はかけたくない。
だから今自分にできる精一杯の笑顔を作って
「よしっ美緒!!入ろっか!! SHR遅れちゃうもんね!!」
「う、うん…」
やっぱり、美緒も気にしてるみたいだったな…
いつもいつも私は美緒に心配かけてばかり。そろそろ私も大人にならなきゃ。こんなことでうじうじして…もっと強くならなきゃ。
だけど、やっぱり…辛い。