アヤトに泣かば強引に連れてこられたアタシは、なぜかドキドキしていた。
男の子と手繋いだことなんかあるし、二人で話したことなんか何回もあるのに、なんで??


「ほら、かぶって」


アヤトはあたしにヘルメットを強引に押し付ける。
アタシはカナエの言葉を思い出す。
高校はいって初めてできた友達だし、中3のときのトラウマが余計カナエ裏切っちゃいけないって気持ちを大きくする。
また一人になるのが怖いから。


「やっぱ、いいよ!アタシ自転車で帰るから!」


「チッ、ったくしつこいな!!!」


アヤトはそう言うと、バイクから降りてアタシを軽く持ち上げて、後ろに座らせる。
そして、優しくヘルメットをアタシにかぶせる。


「おまえ、なに顔赤くしてんの?」


「う、うるさい!見るな!」


人生初のお姫様だっこに、アタシは心臓が爆発しそうになっていた。
アヤトは見るなって言ったら、ほんとに見ずに、バイクのエンジンをかけた。

この歳で、こんな渋い単車乗ってるとかなんかすごいな~

なんて思ってると、バイクは動きだし、アタシは反射的にアヤトにつかまる。


━━━ギュッ


「もっとちゃんと捕まってないと、落ちるぞ」


アヤトはそう言いながら、またアタシの腕をつかんで、自分のお腹に回させた。


かすかに香る香水の香りと、時折当たるアヤトの髪がくすぐったい。
初めてバイクのケツに乗ったけど、初めてのアタシでも分かるぐらいに優しい運転。
何度も何度も「大丈夫か?」「怖かったら言って」って優しく気遣ってくれる。


アタシは少しだけ、回す腕の力を強めた。