「花紗音ってさ……なんか、時々変」






ケラケラと笑いながら変だと告げられた。




遥香には言われたくないなぁ。




「…変」




「うん。だからかなぁ?」




………知らない。





「………こんなんじゃ、樹生に愛想つかされる気がする」



はぁ、とため息をついたとき。





「なにが?」





という低い色気のある声とともに背中に重みを感じた。





「げ」




その重さの正体に目を向けた遥香は、あからさまに嫌そうな顔をした。





「俺が、なに?」




今後ろを振り返ったら負けだ。




そんな気がしつつ、私は眉間にシワを寄せて口を開いた。





「………別に、楽しそうだねって思っただけ」




「なにが」



こいつ……樹生は、ふざけているのだろうか。





「…………女の子にベタベタされて楽しそうねって、思っただけ…」




もうヤケだ、そう思って言ったのに、だんだん語尾が小さくなって行く。





………私、何気に傷ついてるかも。





「…………花紗音」




「なに…」




真面目な声が聞こえたと思って振り返ると、唇に何かが触れた。




それが樹生の唇だと気づいた瞬間、顔が熱を持った。






「っ何す」



「俺、楽しそうに見えた?」



…………………わかって言ってるなこいつ。




振り返ったことで、間近に見えた樹生の顔。





タレがちな瞳。


左目の下には涙ボクロ。




色気がある顔を体現したらこうなるのではないか、という顔をしている。






「………………見えた」


私が小さい声で、わざと不機嫌に告げると。



「そりゃあ可愛い女の子は好きだからね」





と、口元に笑を浮かべて言い放った。



……………な、殴りたい。



眉をぴくぴくと動かしていると、ふっと笑われた。



なんだよコノヤロ。




私が何気にイライラしていると、樹生は薄く唇を開いて。




「……まぁ、」




一言呟いた。


かと思ったら顔が近付いて。




「な、なに」



ちゅ、と目元に口付けが降ってきた。





「……彼女にしたいのは花紗音だけなんだけどね?」





そう言って、クスクスと笑いながら、樹生は離れていった。






「………ムカつく」




遊ばれてるだけじゃん。




ムスッとしていると、遥香は。





「とか言いつつ、ほっぺ赤いよ〜」




つんつんと頬をつついてきた。





き、気のせい。




「あ、ねぇ今日って放課後暇?クレープ食べいかない?」




「あ、ごめん撮影……」




「そっかー。じゃあまた今度ね〜」





にひひ、と笑う遥香だけど、結構無理させてないかな?





撮影があってあんまりかまってあげれないし。




そういうと、なら今度なんかおごってよーと笑われた。





気さくで、こんな私でも親友でいてくれる。




遥香大好き。