ガヤガヤと騒がしい昼休み。
持参した弁当だけでは足りなかった男子が購買へ走り。
何人目かの彼氏と何度目かの別れを告げたらしい女子が合コンをセッティングしようとしていた。
そんな騒がしい教室で、甘ったるい声が聞こえた。
「ねぇねぇ?今日こそ一緒に遊んでくれる〜?」
そっちに視線を移せば、特定の彼氏を作らない女子が1人の男子生徒にすり寄っていた。
「んー。することにもよるけど?」
男子も男子で、にやりと笑いながら女子に顔を近づけた。
「え〜?言わせるのぉ〜?」
……その甘ったるい声はどこからでてるのか。
いい加減にして欲しい。
「あーあ、またやってる」
私の前の席に座ってドーナツを頬張りながら呟いたのは、友人の遥香。
「ね〜ぇったらぁ〜」
ああもう、うるさい。
だいたい、あなたがすり寄ってるその男。
私の彼氏なんですけど。
クスクスと笑いつつ私に視線を送るアイツ。
沖田 樹生は、私の彼氏だ。
私は、楽しそうにこっちを見ている樹生から顔を背け、手元の日誌に集中する。
すると、私の反応をみた遥香は目を見開いて。
「嫌じゃないの?!アンタ。彼氏が他の女とベタベタしてんだよ!?」
と、鼻息荒くまくし立てた。
……………。
「いやぁ……なんていうかさ」
嫌じゃないわけじゃないんだよ。
どっちかというと嫌だけど。
「……言うだけ無駄っていうか……言ったら負けっていうか」
そう。
私がいくらやめてくれと言ったところで、アイツの性格はそうそう変わらない。
あの軽い調子はもはや癖なのだ。
そして言ったら言ったで、また面白がってやめるわけがない。
むしろエスカレートしそう。
「………で、も、さぁぁあ〜……」
がくんと項垂れた遥香をよしよしと撫でる。
「花紗音、あんたってホント冷めてるっていうか……」
……うーん?