「怒らないで聞いてくれよ。俺、卒業するときお前に告ってるだろ?

あの時は振られたけど、実は本当は両思いだったんじゃないかなんて思っちゃうんだよな」


私の方からは避けていたその話題。急に大嶋の口から飛び出たことで動揺してしまい、慌ててジョッキに口をつけた。

しかし私は、今の一言で大嶋の言ったことがわかってしまうことになった。


大嶋の中では『振られた』ことになっていたんだ。


だけどそれは事実ではない。私はあの時、彼に返事をしていないのだから。


同じ時間を一緒に過ごしているのに、あの頃の記憶は少しずつ違っている。彼の言う『過去を脚色』するということは、そういうことなのだろうか。