ちょうどヒロが答案を受け取っていた。

大嶋は戻ってきたヒロが席に着いたのを確認してから私に言った。


「何もやめることなんてないだろ。浅倉に遠慮してるのか?」


男子の答案を全て返した先生が、今度は女子の名前を呼ぶ。

そして最初に呼ばれたマナが、教卓に向かっていった。


私は答案を受け取るマナの方を一瞥してから大嶋に向き直る。


「遠慮とか……そんなんじゃないよ」

マナのヒロへの気持ちを聞いたときから、私はずっと考えていたんだ。

もし同じように私の気持ちをマナに言ったら、きっとマナも今の私と同じように悩んでしまう。


「だから、私がヒロを諦めるのが一番いいと思ったの」


積極的にヒロにアプローチをしているマナ。

ヒロがマナを好きになるのはきっと時間の問題なんだろうな。

かわいくて性格もいいマナだから、ヒロが好きにならないわけがないんだ。


だからそうなる前に私がヒロへの気持ちを忘れてしまえば、きっと傷つかない。