「お前さ、何やってんだよ」

突然大嶋が、後ろから小声で私に言い捨てるようにつぶやいた。

「え、なにが?」

「避けてんだろ」

大嶋がくいっと、あごでヒロを指した。


「……なんか言ってたの?」

「いや、何も」

そのタイミングで教室のドアが開いて、数学の先生が入ってきた。


この時間もテストの返却。

また順番に名前が呼ばれていき、出席番号の早い大嶋が答案を受け取ってからこっちに戻ってくる。

大嶋が私の横を通る瞬間に合わせて、独り言のように小さな声でつぶやいてみた。


「あのね、大嶋。私、ヒロのこと好きなの、もうやめるんだ」