そして、考えることをあきらめたように話に終止符を打った


「ところで、どうして悲しみがない世界は素敵だと思ったの?」


『それは、簡単です。誰も悲しまない世界が素敵だと思ったんですよ。つい最近本を読みました。』

間を置いてから、彼女は言った。

『その本は、魔法使いが人々の悲しい感情を消して笑顔あふれる町を作っていくお話です。』

「面白そうだ。でも、理由はそれだけではないはずだ。」

話をそらそうとしても結局は振り出しに戻されてしまう。

それなら仕方がないと、真実の中に嘘を交えて伝えることにした。

『私には、感情が分からない。だから興味を持った、そして悲しみとは何なのか知りたくなった、それだけです。』