ちょっと後ろめたかったけど


どうしてもハルの声が聞きたくなって


部屋について


一日の用事を済ませてから


ハルに電話をした


店の様子やライブハウスでの


演奏の後の片づけなどを考えると


その時間ならきっとハルの邪魔にならない


着替えを済ませ呼び出しボタンを押すと


スマホに顔を近づけた



「はい。」


ハルの声がした


柔らかくて


優しいハルの声だった


その声を聞いただけで


安心して


自然に笑顔がこぼれる


「元気?」


そう言うのが精一杯だった


本当はさっきまでライブハウスにいたことを


話すとハルはきっと心配する


忙しくて連絡もできなかったことで


彼に会えなかったことを


ハルならきっと申し訳なく思うから


するとハルはふざけて


父親のように


風邪をひいてないかと心配してくれた


その気持ちだけで嬉しかった


彼が照れてそう聞くから


私もふざけて怒ってみせる



ホントは


心の底に小さなひっかかりができていた


なんで名古屋に来たのに


電話くれなかったんだろう


その小さなひっかかりは


ライブハウスで沢山の人に囲まれたハルを


見てしまった心の奥で小さく不安の信号を


送っていた


だから、こんな風に心配してくれたのが


凄く嬉しかった


大好きなハル


貴方を失いたくない


失いたくないのはあなただ


こんな風に


さりげない優しさをいつも私にくれる


あなた自身なんだよ


私がふざけて怒ると


ハルが笑った


私も笑った


するとハルが


「愛果には俺が必要だよな。」


と電話越しに訊ねてきた


そうだよハル


あなたがいないと


私はどうしていいかわからない


私の未来はあなたと一緒にいること


そう約束したから


その言葉に私は心の小さな引っ掛かりが


消えていくのを感じた


そうだよ


こんな風に


あなたの言葉一つで


私の心は幸せでいっぱいになるほど


私はあなたが好きなんだよ


そして


あなたのその言葉で


私もあなたにとって


必要とされているって感じることが


何よりも嬉しかったのだった