公園の横の歩道を速足で過ぎ去ると


愛果の勤める会社の入ったビルのある


大通りにでた


そのままその通りを左に曲がり


歩道を真っすぐ歩いて


最初の信号のある交差点の角に


愛果の勤める会社があった


車の通る道路と歩道の間には


道路の上を走る高速道路に届きそうな


高さに育った街路樹があって


木々の葉が風に揺れて


街灯の光を隠したり


路上に光を落としたりしている


ひょっとしたら


愛果にあえるかもしれないという喜びで


足取りも軽く


幸せな気持ちで交差点へと歩いていた


だから


目的の交差点について


愛果の会社の入ったビルに目線をむけた時


言葉を失ってしまった


会社のフロアーの室内電灯が消え


真っ暗になっていたのだった



行き場を無くした


俺の心と足はこの現実を受け入れる事ができなくて


ビルの前まで歩き続けた


もしかしたら


今電気が消えたところで


愛果がビルから出てくるところかもしれない


俺をみつけた想像の愛果は


俺を見つけると


嬉しそうに微笑む


そして


俺に近づいてきて


どうしたのと


俺に声を掛ける


てれた俺は


それでも笑顔で


迎えにきたと彼女に声をかけるのだ


その言葉に嬉しそうに笑う愛果


その笑顔が見たかった俺


彼女と手を繋いで


駅へと並んで歩き出す


その彼女に逢いたくて


俺はビルの前で


彼女を待つことにした