御祝いムードのお店の恩恵を受けて


初めてのライブハウスのステージは大成功だった


演奏している間もその後も時間のことなど


いつも全く気にしないから


全てのことが終わってお店を出で


スマホを広げて現在の時間に慌てた


既に十時を回っていたのだ


今回名古屋に来たのを


愛果に内緒にしていたのには訳があった


仕事帰りの愛果を待ち伏せて


愛果と一緒に帰宅するつもりだったのだ


月初めのこの時期



愛果はいつも残業で退社する時刻が


九時をまわったりする


そんな時いつも愛果は


必ずラインでメッセージを送ってくる


それはそれで嬉しのだけれど


本当はそんな時に彼女の傍にいてやれない自分に


時々イライラしてしまうのだ


同じ時間に歩く


ライブハウスから地下鉄までの道のり


ラインで会話をしていても


すれ違うスーツ姿のカップルの女性に


愛果を重ね合わせてしまう


もちろん愛果はそのことで


一度も自分を責めたりしなかった


でも時々冗談半分で送られてくる


愛果からのメッセージは


迎えにきて


手が冷たいから温めて


なんて送られてきたりする


愛果知ってた?


その度俺はいつも君が恋しくて仕方がなくなるんだ


そんな君を抱きしめて


離したくないって言葉を


俺は何回飲み込んだだろう


その言えなかった言葉を今夜


君を抱きしめることで伝えようと


もうずっと心の中にしまっておいたんだよ