のんびりとしたその会話から

ハルを慕っていることが感じられた

やばいよね、あのかっこよさ

そう話す二人組の女性の一人は各地で演奏するハルを

追いかけているみたいだった

もう一人の女性は今日は付き合いで観に来ただけらしい

それでも

ハルの演奏に引き込まれて

ハルのことを嬉しそうに話している

久し振りに見るハルの演奏

でも愛果は気がついていた

いつものハルの演奏とは違うことに

もっと調子の良い時のハルの演奏は

高音の音の伸びが全く違うのだ

今夜のハルの演奏は

どのパートも何だか少しだけ

元気がなかった

ただそれでも例えば一曲としては

ちゃんと完成していた

愛果は逆にその事がとても嬉しかった

自分の夢で生きていくことに

一生懸命だったハル

今、その努力が花を広げようとしている

ライブハウスのイベントなので

演奏は三曲だった

どれも昔から演奏していて

ハルの得意な曲

だから少しテクニックで新しい曲にアレンジを

変えて演奏することができたみたいだった

また、それがとても良かった

演奏が終わりハルはサックスから唇を離した

その瞬間、舞台の照明が明るくなり

今日の演奏に満足そうな

ハルの笑顔が見えた

その途端、一斉に拍手が沸き起こり

会場の人達が皆立ち上がった

愛果は前に立つ人達の間から

会場にいる人達に沢山を貰って

幸せそうに微笑むハルの笑顔を見れただけで幸せな気分になった