五階の廊下には、溢れんばかりのゾンビがうごめいていて、私たちが廊下を歩くのは不可能だった。




この大勢のゾンビたちは、きっと解毒剤倉庫で解毒剤を守る番人に違いない。




ゾンビたちがあふれるその光景を見た瞬間、私の頭の中に絶望が駆け巡った。




たった三人で、何十体いるかもわからないゾンビたちを相手になんてできない。




そんな無謀な勝負は、戦う前から結果がわかっている。




「凛子、これってもうダメだよ。

これ以上前に進むのって、どうやっても無理だよ」




「凛子さん、解毒剤って、この建物のこの階にあるんですよね。

ここにあるって、わかっているのに、何もできないなんて、悔しいです」




瑞穂はそう言って、一筋の涙をポロリと流した。




「凛子さん、私もゾンビになってしまいます。

もうダメですよね。

あきらめるしかないですよね」




ゾンビたちは、私がいる北側の廊下に向かってきていた。




ゾンビたちはきっと、さっきの機関銃の乱射音に反応しているのだろうと、私は思った。




万事休す。




私たちが行く道は、ゾンビたちに占拠されていた。