部屋に入ってきたのは、大柄な男のゾンビだった。




髪の毛は抜け落ち、ボロボロの服を着て、大きく開けた口からは、ヨダレを垂らしていた。




その男のゾンビは、部屋の中で辺りをキョロキョロと見まわしていたが、私たちに気づく様子はなかった。




〈 お願いだから、早くこの部屋からいなくなって。

そうでなくちゃ、息が続かない…… 〉




この一体のゾンビを倒すだけなら、私たち三人で何とかなると思う。




でも、大きな音がゾンビたちを呼び寄せてしまうことを私たちはこの『ゾンビ街』での経験でわかっていた。




〈 なるべくなら、ゾンビとの戦いを避けたい。

一体のゾンビを相手にしたら、また新たなゾンビが現れるから。

ゾンビたちは群れをなしたとき、本当の恐ろしさを見せる。

ゾンビたちに囲まれたなら、まず人間は助からない…… 〉