「ゾンビがいたのか……」




床に倒れている老婆のゾンビを見下ろしながら、蒼太がポツリとつぶやいた。




「やっぱりこの『ゾンビ街』の世界には、ゾンビがどこにでもいるのよ。

油断していたら、不意を突かれて襲われるわ」




「凛子は大丈夫だった?」




蒼太はそう言って、私の顔を見つめていた。




「凛子はゾンビに噛まれたり、引っ掻かれたりしなかった?」




「私は平気よ。

私は殺られる前に、ちゃんとゾンビをしとめたから」




「良かったよ。

凛子の悲鳴が聞こえたとき、凛子が殺られたかと思って、必死にここまで走ったんだ。

凛子がゾンビに食われたら、イヤだからな」




「蒼太は私の心配よりも、自分の心配をしてなよ。

私は強いの!

凛として、誰にも負けない凛子なの。

弱虫の蒼太と一緒にしないで!」




私はそんな悪態をつくと、蒼太から目をそらした。