「なるほど。ありがと」
駅員は果たして相手の事を思って言っているのか。にわか疑問であったが、次見た時には彼の手にはあの抹茶味の飴が手渡されていた。
「時間は限られています。この電車が次の駅に着くまでです。 ではごゆっくり。」

駅員がそう言った瞬間に電車の扉は閉まった。
車内を見ると、さっきとは違って人が沢山いた。 人は自由奔放に車内を走り回っていた。こんなので誰か注意しないのだろうか。そうやって何かを考えているうちに、風景はがらりと変わった。 
懐かしいのと、制服が初々しいのを見ると、高校の入学式だろう。あの時は桜がとても綺麗に咲き満ちていた。僕と母親は入学式の看板の前に立ち、満面の笑顔で父親に写真を撮ってもらったのを覚えている。家族は皆良い笑顔だった。
「はい、皆良い顔してー」
「おい、孝雄笑顔がない。もっとニコッとしてー!はい、入学おめでとう!」
それから数日後の事が浮かんできた。改めて車内を見ると、それは僕が想像しているそのものがはっきりと映っていた。