それからおよそ数分後違う駅員らしき人が孝雄の前にやって来て、真剣な表情でこう言った。「けど君にお願いがあるんだよ。例えそれが辛い事でも、私に包み隠さず教えて欲しい。出来る?」
孝雄は最初こそどうしようか迷っていたが、駅員の優しい笑顔を見ると、意を決したのか❛❛出来る。だからお願い❞と力強い声で言った。それは決意した時の顔であった。
駅員は彼の決心した顔を見て再度……
「本当に大丈夫?後悔しない」と問いただした。
彼は大丈夫と頷くとさっきの駅員がちょっと昔に売っていたビデオ用カセットらしきものと、抹茶味の飴を差し出してくれた。
駅員は優しな声でこう言った。
「最近のあなたの中で一番鮮明に残ってる記憶は?」
それは彼のこれまでの記憶にする大切なものであった。
孝雄は悲しく、小さな声で母親が突然病死したことを告げた。