「鈴木蘭子て知ってる?」
「鈴木蘭子?」
「昔の鈴木蘭子さんが未来の鈴木蘭子さんに送った手紙だったから」
「なんかややこしいな」
鈴木蘭子という名前を俺は聞いた事がない。
つまり、このクラスの女子ではないことは確実だ。
「知らねーな」
浩介も分からないということは、陸上部でもなく、可愛いと定評のある女子でもないということだ。
数学の授業をする教師が眠そうに教室へ入ってきた。
アイボリーのニットが中年期特有の腹を誇張させている。
「取り敢えず陸上部に聞いてみるわ」
各クラスに一人は存在する陸上部の生徒に浩介が名前を聞けば、誰かしらが知っているというのがいつものお決まりのパターンである。
浩介に尋ねた翌日には、顔にハートが付いていたりするプリクラなるものを添えて丁寧な情報が伝えられる。