「どうした?」



黙り込んだ葵の顔をじっと見る。



「な なんでもない!」



首を振るとさらっとした長い黒髪が舞う。



たとえ時間つぶしに会いに来てくれたのだとしてもわたしはうれしいよ・・・



「俺は葵だけに会いに来たんだよ?」



「本当に!?」



葵が思いもしなかった言葉を紫月の口から聞いて耳を疑った。



「本当」



紫月の手が葵の肩に置かれ抱き寄せられた。



長旅をして来たと言うのに紫月は疲れも見せずさわやかな香りを漂わせていた。