「彼女に謝ってください」


いつもは穏やかな榊だが無神経なこの男には怒りを覚える。


紫月の財産に食らいつこうとする汚い男め。


「榊先生、いいんです 結城さん もう行く所だったんです」


葵は立ち上がり荷物を取りに行こうとドアに向かった。


「早く出て行くがいい!」


紫月が愛した葵が相当目障りなのだ。


「葵様、わたくしがお荷物を持ってまいります」


宇津木が葵の動きを制して言う。


「いいんです あたしに行かせて下さい・・・」


宇津木が荷物を取りに行っている間中、ずっとこの耐え難い視線で見られているのが嫌だ。


葵は涙を堪えて自分の部屋ではなくなる部屋へスーツケースを取りに行った。