「紫月っ!」


玄関を出た所で葵の声がした。


振り返ると軽い衝撃が紫月の身体に伝わる。


振り向きざまに葵が紫月の身体に抱きついたからだ。


「葵?」


「いってらっしゃい 紫月」


紫月の後姿を見ていたら無性に抱きつきたくなったのだ。


そうしなければいけない気がした。


「行ってくるよ 空港で会おう」


紫月はもう一度葵に口付けをすると車の後部座席に乗り込んだ。


なんとなく不安な感覚。


葵はぼんやりと車が去っていった方を見ていた。


「葵様?遅刻なさいますよ?」


宇津木に声をかけられて我に返った葵だった。