貴子はおいしそうに食べる葵を見ていたが、やはり様子がおかしい事が見てとれる。


目の下にくまが出来、フォークを持つ手は震えているようだ。


「どうしたの?食べ終わったら外に出しておくから」

フォークを持つ手を止めてニコッと貴子に笑う。


それでも貴子は葵が食べ終わった頃にもう一度姿を見せた。


「ごちそうさまでした」

中身は半分ほどしか減っていない。


「食欲がないのですか?」

葵様の大好きな食べ物なのに・・・と貴子が聞く。


「もうお腹いっぱいです」

葵は申し訳なさそうに言いながら立ち上がる。


テーブルからトレーを持ち上げて貴子を見た瞬間、体がぐらっと揺れた。


手からトレーは離れ大きな音をたてて床に転がった。