夕食前に恭臣が現れた。


大きな花束を抱えている。


「恭臣くん、どうしたの?」


リビングで一人お茶をしていた葵が小首をかしげる。


「葵さんおめでとうございます」


恭臣が花束を葵に差し出した。


「いいの?ありがとう 恭臣くん」


花束を受け取った葵がうれしそうに言う。


「もちろん 理事長も我慢できなかったんですね?すぐに婚約するとは思いもよらなかった」


「あたしも驚いているの」


「理事長なら葵さんを幸せに出来ます ところで理事長は?」


「さっき電話があってから書斎にこもっちゃった」


苦笑いを浮かべる。


「仕方ないですね 理事長は秒刻みで動く人ですから」


確かに紫月はいつも忙しい。


温泉に行けたのはある意味奇跡かもしれない。