「いや…なんでもない」



とだけいうと振り返り、歩き始める。



その光景が頭の中で何かと重なった。




…思い出した。



夢に出てきた人だ!




男子生徒に話しかけようと思ったけど、もう屋上の入口の扉に手をかけている。



せめて名前だけでもと、上履きのかかとに視線を動かす。



昔から視力だけは良いって言われてただけあって目を凝らせばどうにか見える。




「綾…瀬…」




綾瀬君…か。