「あれ?エレナちゃん、今日陽太くんとデートじゃないの?」



いつもの行きつけのバー
いつものカウンターの席に座りながら答える

「またドタキャン」


「あらら、またね」


「しょうかないよ仕事だもんね。マスターテキーラちょうだい」


「は?テキーラなんか飲んだことないでしょ⁈ダメだよダメ」


もともとお酒があまり得意ではないあたし
いつもは甘いカクテルばかり
でも今日は飲みたい
このモヤモヤした気持ちを消したい


「いいじゃん!飲みたい気分なの!!」


マスターに怒鳴りながら寂しさを噛みしめる
陽太に会いたい…


「はい、テキーラ!つぶれないでよ」


「ありがと」

そう言ってあたしはテキーラを流し込んだ
喉が一瞬にして熱くなる
悲しさを溶かしてくれているみたい


「マスター、もう一杯!」

「はいはい」


二時間、テキーラを飲み続けた
そのおかげで完璧に出来上がりました


「マスターーーーー、もう一杯」


「レイナちゃん、飲みすぎ」


「大丈夫!酔ってない」


あー。気持ちいい
フワフワする
飛んでるみたい



「あ、航(わたる)!久しぶり」


「マスター!久しぶり!いつものちょうだい」



マスターと親しげに話す男
あたしと少し離れてカウンターに座る



「最近、来ないからどうしたかと思ってた」


「あー、仕事忙しくてさ!久しぶりにマスターの酒飲みたくて」



なにこいつ
ちょっとイケメンじゃん
陽太の方がかっこいいけど




「マスター、テキーラ、早く」


マスターにもう一度テキーラを要求した


「エレナ飲みすぎ!お水飲みな」


「やだ、お酒ちょうだい」