理事長室から出た私は、無表情で裏門へと歩き出す。
その途中ですれ違った人たちは、私の顔を見て道を開ける。
それほど怖いだろうか…自分ではよくわからない。
…だけど、これからやることは、感情を無にしなければやりこなすことが出来ない。
『仕事をする時は、感情をなくせ。
人形になれ。感情を持つな。
…一切他人に現(ウツツ)を抜かすな』
これは、金龍の仕事が始まってからずっと言われ続けられてきた言葉だ。
それが、私を余計に苦しめる。
…私だって人間だ。感情だってあるよ。
ただ、人よりちょっと欠けてるだけで…。
自分の頭の中で、言われ続けられた言葉がループする。
唇を噛み締めていれば、目の前に黒塗りの車が静かに止まった。