雅「今日は転校生がいる。変な時期だが、親の転勤だったらしいから、ちゃんと仲良くしてやれよ」



じゃあ黒野、入ってこい
その声に合わせて私は目の前の引き戸を音を立てて開けた。



私が新たに入るクラスは、3-A。やめる前にいた学年は2年だけど、理事長が知り合いだし、このクラスの担任も知り合いだからそんなことはどーにでもなる。


…いや、当たり前に変装はしてるけどね。



雅「じゃあ、自己紹介しろ」


「……黒野 伶。誰とも仲良くするつもりはないから、話しかけないで」


雅「伶香…おまえ……いや、なんでもない」



小さな声で、顔を歪めながら呟いた雅紀の言葉は、私以外には聞こえない。

雅紀が顔を歪めた理由は、わかる。


だって、"黒野 伶"という人物は、雪火に復讐するためだけに作られた架空の人物だから。


友達や、仲良くする子がいたら邪魔なだけだから。

私が自己紹介で言った言葉には、この意味が含められていた。