「っ、京!」


「ぉわっ!?!?」




バンッとものすごい音を立てて開いた扉は、「理事長室」の名前が書かれているプレートがぶら下がっている。

だけどもそれを気にすることもせず、ある人の名前を呼びながら思いっきり開けた。



突然の音にびっくりして、机の上にコーヒーをぶちまけた男は、理事長だ。

ナルセ キョウ
名前は成瀬 京、理事長であり私の知り合いだ。



「れ、伶香!? どうしたってお前、その傷…!」


「っ、机の中に仕込まれていたのに気付かなかった。 多分変なとこ切ったから血が止まらない」



ズキズキと痛みを感じる右手は、もはやハンカチで血を止めている意味をなしていなかった。

ハンカチは隙間なく私の血で赤黒く染められ、吸い切れない分はポタポタと床に落ちていく。


見るからにそれは、小さい傷ではないことを物語っていた。