...こうして、私と彼は永遠に幸せに暮らすことになりました。きっとこの先何十年、何百年、何前年と二人で手を取り歩んでいきます。

...感嘆を吐いてから読んでいた小説を閉じる。もう!素敵!やっぱり物語はこうでないと。男女の出会い、そこから始まる恋、そしてハッピーエンド。うんうん、これこそ理想にして至高!

「...あーのさぁ心陽ぅ」
「んー?」

にしてもこの小説も読み終わっちゃうな。次は何を読もうかな〜なんて鞄を探る。中にはほぼ本しか入っていない。
お姫様と王子様が幸せになる絵本は流石に卒業したけれど恋愛ものの小説や漫画、ドラマに映画にグレードアップしただけであまり幼少期と変わっていないような気がする。
うーん、まあ仕方ない!これも王子様が私を迎えに来てくれる時のシチュエーションの勉強!
だから読む!以上!

「こーはる!!!」
「わあ!」

私の手を掴んだのは大親友の夢ちゃんだった。
あっ...そういえばさっき呼んでたような。
いけない、また自分の世界に入っちゃった。

「なあに、夢ちゃん」
返事をすると夢ちゃんは呆れたように頬杖をついた。その仕草は女の私でさえちょっとドキッとするくらいに可愛らしい。実際、彼女はお姫様みたいにちっちゃくて可愛い。私の想像するお姫様そのものだ。

「あんたね、高校三年生にもなってお姫様、王子様って...いい加減にしなよ、何その本!」
「これはバイブルなの!」
「ばっ...実戦しろ実戦!いつまで学んでんの!!」
実戦って。

「そんな戦じゃないんだから...」
「バカ、恋は早いモン勝ち、騙したもん勝ち。ほぼ戦よ、本能寺の変くらいのね」
「本能寺って...過激すぎでしょ...」
中身は、なかなか好戦的なお姫様だけれど。
「心陽可愛いんだからそろそろ本命作りなよ?...心陽に告白した連中が哀れだよ」