イケメンさんの方に視線を向けると、ふっと笑った。

「永塚 季龍だ」

永塚、季龍(ながつか きりゅう)さん…。

なんか頬が熱い。イケメンさんの不意打ちはずるい…!

頭を下げると、頭をあげろとすぐに言われる。その通りにすると、頷かれた。

「あと、お前はここにいるときは着物で動いてもらう。使用人は屋敷の顔でもあるからな。客が来たらお茶出しもしてもらうことになる」

「コクン」

「とりあえず、今日は休んでいい。後で家具屋と呉服屋が来るから、必要なものは買え。着物は最低5つは選べ。この部屋はお前の部屋だ。好きに使え。本格的に動くのは来週からでいい。それまでの間に食事は作れるようにしておけ」

「コクン」

「…家事をやってくれるなら、悪いようにはしない。分からないことはすぐに聞け」

「コク」

「まぁ、大丈夫だよ。ここちゃん。俺らここちゃんで遊ぶために買ったんじゃない。本当に女手がほしくて、ここちゃんが必要だったから連れてきたんだ。だから、少しずつでいいから怖がらないでな」

言われて気づく。まだ手が震えていた。震えを押さえるように手首を握っても全然収まらない。

なに震えてるの。怖くないのに、こんなに優しくしてくれてるのに。

息を深く吐き出して、背筋を伸ばす。