心地よい風が赤く染まった頬をすり抜けていく。ほんのり、桜の香りを乗せて。
冷たくて、でもどこか暖かい風に、春が来たんだなぁと感じさせる。

「えっと……ここを右に曲がって……」

真新しい制服に身を包んだ柚奈は、地図を片手にこれから通う高校に向かっていた。

「ついたっ!」

桜並木の長い長い坂道を登りきった所にあるその高校は、県内でも有名な進学校だ。
柚奈は、どうしてもこの桜並木の坂道を歩きたいと思い、必死になって勉強したのだ。
大学教授の父、高校教師の母からの勧めもあったからなのだけど。

「しっかし……おっきいなぁ……」

全校生徒合わせて1000人以上いるこの高校は、校舎が五つもある。

受付どこだろ……。んーと、んーと、、あっこの階段登れば……。

―ふわっ

階段の踊り場の窓から優しく撫でるような風が柚奈の髪をなびかせる。

綺麗な人……。

階段を登った先には、黒髪ロングの超美少女。
『生徒会本部』と書かれた腕章をつけている。

こんな美少女この世にいるんだ……。

柚奈は風に吹かれてボサボサだった髪を整え、受付に向かった。


「……以上で、今年度入学生、入学式を終わります。」

これから始まる高校生活。
柚奈は満面の笑みと共に入学式を終えたのだった。