フラれたことないって言ってたし……。
いやいやいや、何考えてんの!
一人顔を赤らめて、わたしは両頬をペチペチって叩いた。
べ、別にわたしは、拓巳の彼女ってわけじゃないんだし。
彼がどこで何をしようと、咎める権利なんかないわけで。
あぁあああ……ダメだ!
他にも考えなきゃいけないことはたくさんあるでしょ? ストーカーのことも解決してないのに!
いやいや。
てか、それよりも、まずは目の前の仕事だ。
ふぅうって深呼吸して、パソコンに意識を戻した時。
制作部の電話が鳴った。
仕事関係の電話は深夜でも鳴ることがあるから、特に何も考えずに受話器を取る。
「はい、AKEBONO制作部沢木です」
『…………』
え?
声を聞き逃したかと、受話器を強く耳に押し当てる。
『コポコポコポコポ……』
かすかに聞こえるその水音に、わたしは息をのんだ。