新side

僕の名前は佐倉 新(さくら あらた)


今日からこの栖蘭高校の教師になる。


まだ23歳という若さで教師になれるなんて夢にも思ってなくて、今でも信じられない。


まあ、今日は先生たちとの顔合わせをして校内を紹介してもらって大体20時には学校に出られる。


「では、佐倉先生。明日からがんばってくださいね。」


学年主任の松浦先生が僕にニッコリと微笑んだ。

50歳くらいの優しいおばさんって感じの人だ。


「はい。頑張らせてもらいます。」


僕もそれに応えるように、ニッコリと笑って見せた。


そして、予想通り20時頃に学校を出た。


ん?


校門のそばに人が座っている。


女、か?


僕は恐る恐る近づいてみた。


そこには、女の子が1人しゃがみこんで寝ていた。


「…え?!ちょ、これどうすれば…」


僕は突然のことで驚き、どうすればいいのか分からなくなる。


「お、おーい。大丈夫か?」


「…ッ?!」


肩をポンポンと叩いて見ると、彼女はビクンッと肩を揺らした。


いや、僕だって驚くよ…?


彼女は目を見開いて僕を見つめてなかなか目を逸らさない。



「だ、誰ですか…」



ようやく声を出したと思えば、この一言だ。


「僕は、ここの教師です。」


今日がなりたてだから自分で教師っていうのがすこし恥ずかしい…


「ふーん。でも、それ嘘でしょ。」


…は?!


彼女は疑うような目で僕を見た。


「だって、私ここの生徒だもん。あなたみたいな人見たことないわ。」


彼女はさらに僕を睨んで見つめる。


「あーもう…」

説明するのがめんどくさくなった。


たぶん何を言っても信じてもらえないだろうしな。


「とにかく。君はもう帰りなさい。」


よく見てみると彼女の服装は11月には合わない服装だった。
露出が多くて、とても高校生には見えない。


「……い、もん…」


彼女は下を向いてボソッとなにか呟いたが、僕には届かない。


「帰る家なんてないもん!!」


彼女は目に涙を溜めて僕を睨み走ってどこかへ去っていった。



…僕はその背中を見つめることしかできなかった。