放課後。

鞄を持ってゆりの元に向かうと、彼女は窓辺で黄昏ていた。

黄昏の時間ではないけれど、窓枠に手を掛けて、外を眺めている。

横顔は整っていて、絵画のようだった。

「ゆり、何見てるの?」

声をかけてその美しさを壊してしまうのが気後れしてしまうようだったが、そういう訳にもいかない。

躊躇いがちに声を掛けると、ゆりは静かに振り返った。

「部活動の勧誘活動を見ているの」

「そういえば、今日から仮入部だったっけ……」

ゆりの隣に立って窓の外を見ると、校舎の外は人でごった返していた。

この学校では入学式初日から上級生による部活動への勧誘活動が始まり、また体験入部も今日からだ。

新入生を獲得するため、どこの部活も気合が入っている。

その一環として、今も先輩達がそれぞれの部活の格好をして並んでいる。

この時期には寒そうなユニフォームでボールを抱えるバスケ部やサッカー部。

ここまでは聞こえてこないけど、楽器を演奏する吹奏楽部。

着ぐるみやコスプレに身を包むーーーー

「え!? なにあれ!」

思わず私は窓ガラスに頬をつけて見入ってしまった。

そこには、周囲から浮いている奇妙な集団がいた。

お姫様のようなドレス、うさぎの着ぐるみ、メイド服、新選組、チャイナ服。

それぞれ派手なコスチュームを身につけていて、統一性はない。

あれもなにかの部活動なのだろうか。

ふと、離れたところからその集団に向かって歩いていく一人に目がいった。

まるで白い学生服のような前止めの上着を着ていて、その至る所には金色の装飾がなされている。

髪の色は、染めているのかウィッグなのかライトブラウン。

上背があり、スラリとしていてスタイルがいいのが遠目からもよくわかる。

鼻は高く、目は大きい。

整っていて、とても優しそうな顔だ。

「王子様……?」

今朝、私を助けてくれた人がそこにいた。