西にある窓がオレンジから紺へと変わってきた頃、私はふと我に帰った。

お腹空いた。と思って。


あれから一人のメイドも私の部屋に出入りしないし、何より夕食の時間はとうにすぎている。


おいおい…まさかわざとじゃないでしょうね。

私は感情を抑えてメイドを呼ぶベルをならした。

‘‘コンコン’’

直ぐに、扉が鳴った。

「ミーア様、何かご用でしょうか」

私付きのメイド、リジェスがすました顔で入ってきた。

「お疲れ様、リジェス。私夕飯を食べてないのだけれど、この家の夕飯は何寺からですか?」

落ち着いた口調で、聞いた。

「夕飯は7時からと決まっております。それまでに、食卓へお尽きくださいますよう、以後お気を付けくださいませ。」

リジェスは、淡々と述べていた。

しかし、私の頭の中では、リジェスの言葉へ疑問しかわかない。

「7時?何言ってるの。もう、とっくの昔に過ぎてるじゃない。」

そう、7時など、とうの昔に過ぎている。

なぜ、呼びに来なかったのか大抵の予想はつく。

おおかた、シアン様とトレシアの身分を超えた愛などと言うものを、ロマンチックだと言って応援しているんでしょう。

私だって、もし彼の妻という立場でなければ、応援していたかもしれないもの。

でも、ちっとも素敵なんかじゃないわ。
身分をわきまえない王子のいる国なんて、他国から舐められたって仕方ない。

「なぜ、教えても、呼びに来てもくれなかったの?」

私は、あえてそう、聞いてみた。

「申し訳ありません。ミーア様が部屋を後にしろと仰られましたので。」

リジェスのこの回答に若干イラッときたので言い返そうと思った。

「あら、王子の屋敷で働くメイドは、臨機応変と言う言葉を知らない、無能なメイドさんなのかしら?フフ」

って言ってやりたかったけど今日出会ったばっかりの彼女に流石にそれはどうよと思ったのでやめておいた。

「それじゃあ、今晩は私の夕食は無しかしら?」

そう聞くと、リジェスは目を伏せて馬鹿にしたように口を開いた。

「そうでうね、調理場に行けば余り物か、残飯くらいはあるんじゃないですか?」

彼女は、私が表情を崩すと思っていたのだろう。ピクリとも動かぬ私の表情筋を見て眉間にシワを寄せた。

ここで、怒ったり、泣いたりしたら思う壺だわ。

そう思った私は、その残り物とやらで目にもの見せてやろうと思い、リジェスに調理場に案内してもらうようたのんだ。