それを聞いた彼は、笑いをこらえているようで、ぎこちない笑いを浮かべていた。

そこには彼の暖かさが滲み出ているように感じた。

「咲織…さん」

「え、あ…はい…?」

まさか自分の下の名前を呼ばれるとは思わず、言葉を選ぶのに戸惑った。しかも、語尾に『さん』がついてるものだから、さらに戸惑う。

その合間に彼が深く息を吸い込んだ。

「あなたが俺に聞いたことですが、」

あぁ、そうだった。私はそれを知りたくて彼に話しかけたのだ。

吸い込んだものを吐き出しながら、彼は続ける。

「……今は…言えません。……ごめんなさい。」