2人の視線が、千尋に集中している。


「あたし、この仕事が好き!

 色んな人と出会えるし、話してると楽しい。

 たまに、酔って困らせるお客さんもいるけど

 何かを忘れたくてだったり

 怒りを抑えられなくて

 飲んでる人もいると思うんだぁ」



『うん』



「その気持ちを少しでも

 和らげてあげる事が

 あたし達の仕事だと思う。

 それなのに

 彼がいると優しく出来ない気がする。

 高いお金払って来てくれる訳だから

気持ち良くなって、帰ってもらいたいと思う。

 上辺だけじゃなくて、また来よう。

 話聞いてもらおうって!」



「凄いね千尋!

 私はそんな事思って仕事してないなぁ。

 でも、凄く分かる気がする」


「ごめん、偉そうな事言って」


千尋は眉を寄せた。