「カナちゃん。ごめん。俺は豊をやらなきゃいけない」



「どうして?チータどうして?」



あたしは両手でチータの肩を掴み、上下に思い切り揺らした。



それでもチータは眉毛を垂らしたまま、何も答えようとはしてくれない。



「金だ」



そんな時、背後から宗の声がした。



振り返ろうと思ったときに後ろから押さえつけられるように抱きしめられたあたしの体。



「こんな奴に触るな。コイツは金のために仲間を裏切ったんだ」



あたしの手は宗に引き剥がされるように、チータの肩から離れていく。



「金……?」



「兄妹のために金が必要なんだと。ヘブンの情報を流して協力したら金をくれるってジュンに持ちかけられたんだよ。汚い男だろ?」



胸が張り裂けそうだ。



お金のために仲間を売った事よりも……



兄妹のためにチータが犠牲になったことよりも……



汚い男と呼ばれても何も言い返さないチータに胸が張り裂けそうだった。



「勘違いするなよ。俺はコイツみたく金のためにここにいるわけじゃないぞ」



宗の言葉になんか答える気にもならない。



今すぐにでもこの腕の中から抜け出して、チータを抱きしめてやりたい。



体を小さくさせて蹲るチータがこのままだと消えてしまいそうで……