笑みを浮かべながらゆっくりとあたしに近づいてくる男。
その顔が段々と鮮明に見えてくる。
真っ赤な髪の毛に頬には大きな傷跡がある。
ポケットに手を突っ込んで歩く男はあたしの前でピタリと足を止めしゃがみ込んだ。
「初めまして。カナちゃん」
男はそう言ってあたしの前に手を差し出す。
「そうだよね。縛られてちゃ握手も出来ないよね。はずせ」
てめぇとなんか誰が握手するかよ。
そう怒鳴りつけてやりたかったんだけど……
その男の表情があまりにも不気味であたしは言われるままに、男の手に自分の手を重ねた。
「……っい」
肌と肌が触れ合ったその時……
男の手に物凄い力が入る。
あたしはあまりにの痛さに顔を歪めた。
「自由にしてあげるから、大人しくしてるんだよ」
縛られていた両足の紐も解いてくれた男は宗を蹴飛ばしてからその場を後にした。