涙を拭い、立ち上がろうとしたその時背後から「久しぶり」という男の声がした。



あたしはその声に振り向く事もできない。



振り向かなくてもわかる。



この声は……



「宗?」



「声だけでわかってくれるなんて嬉しいよ」



「宗?どうしてここに?」



あたしは勢いよく立ち上がり、後ろへと振り向いた。



その瞬間に感じた下腹部の鈍い痛み。



あたしはお腹を庇うように前傾姿勢になりながら床に膝をつく。



あそこから入ってきたんだ……



あたしの視界に入る窓はガラスが割られている。



爆音に合わせて宗はこの窓を割ったんだろう。



気付かないわけだ……



そんな事を思っているうちにもう一発、宗の拳があたしの頬に命中し、あたしは意識を失った。