昔のことを引きずって涙を流す男なんて女々しくて気持ち悪い。大半の人がそんな風に思うだろう。香奈だって、いつまでも俺が引きずって泣いていることなんて望んでいないだろう。

でも俺は忘れたくないんだ。こうして思い出していないと、一緒に過ごした色鮮やかな日々がどんどん色褪せていくような気がして怖いんだ。

ふと顔を上げると、もう家の近くの公園まで帰って来ていたことに気が付く。

「なにしてんだろうな、俺。」

自嘲的に笑ってゆっくりとした足取りで公園へと向かうと、ベンチに座る。ここにも、想い出がたくさんある。

俺が最初に告白した場所だ。

俺が好きだと言うと、香奈は目を丸くしてその大きな瞳からぽろぽろと涙が溢れさせて、かと思えば涙交じりに満面の笑みで笑っていた。

ひまわりのような、香奈の笑顔が好きだった。いや、今も好きだ。

朝起きたらころっと香奈が戻ってきている、なんてことをあの日から何度夢見ただろうか。

香奈が死んだ。

その報せが入ってきた日は頭が真っ白になって何も考えられなくて、ただ信じたくなかった。

俺は香奈の葬式に呼ばれていない。後に香奈のお母さんから親族だけで葬式はあげた、ということを聞いた。

葬式に行っていないから香奈が死んだ実感が湧いていないんじゃないか、と友達から言われたけど実感はあるんだ。

だってほら、こんなに涙が止まらない。